オオギセル(マルテンスギセル)

軟体動物門 腹足網 柄眼目 キセルガイ科 殻径約9mm 殻長約45mm

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キノコの生えた朽ち木の裂け目で見付けた大型個体。

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未成熟と思われる巻き数の少ない個体。殻口も反っていない。

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キセルガイ科のカタツムリは「殻の高さを伸ばす方向に進化した」グループです。
実際には形態のよく似たキセルガイモドキ科のように同じような方向に進化したものたちもいますが、極端に縦長の殻を持つものはキセルガイ科が最も種類数が多く、細長い殻の形状で落ち葉の下などに潜り込みやすくなることで成功したグループといえます。
しかし「落ち葉などの下に潜り込みやすい」という利点からはやや離れて大型化したものが本種ということになるんでしょうか。
前述の「キセルガイモドキ」を見た後に本種を見付けたため、最初は混同して「ちょっと雰囲気の違うキセルガイモドキだな」と思っていましたが、写真で見たら巻き方向が逆(キセルガイモドキは右巻き、本種は他のキセルガイと同じく左巻き)なのに気付きました…(^^;

一般的には本種は「世界最大のキセルガイ」といわれていますが、Wikipediaの記事によると滋賀・三重・愛知に生息するものは亜種の「オオマルテンスギセル」とされているようで、東三河で見られるものもそちらなのかもしれません

観察された状況から、主に朽木の腐朽菌やキノコなどを食料としているようです。

ishidaの場合は環境を改変することなく「生態写真」を撮影するのが基本で、生き物を探すために地面を掘る・倒木をひっくり返す・朽ち木を崩す・樹皮を剥がす…といった行為はしない主義で、彼らのような生態の生き物と出会うタイミングはけっこう少ないうえに、自分のように研究者でない人間にはキセルガイの同定はなかなかハードルが高くて、これまでは明快に種名を特定できなかったので個別の記事にはしていませんでしたが、大きさなどから考えて本種によく似たものは他にはいないということで本種としています。

--------------------------- 2021.09.29 追記・写真追加 ---------------------------

これまでは腐朽木とその周辺でしか見たことがなかったため「腐朽菌やキノコなどを食料としているようです」としましたが、たまたま別の山域で本種の多産地に遭遇して観察した結果では特にそこまでの偏食は無いようで、逆に地上性のマイマイ類のように岩の表面などを這いまわっていました。
(もちろんカタツムリ全般が「キノコ好き」なので、本種も含めてキノコがあるところで見付け易いのは間違いないですね。)
ただ、生活環境や食物によるものか、単なる年齢差によるものか、腐朽菌やキノコを食料にしていると思われるグループのほうは殻頂が折れていないものばかりで、逆に石灰岩の岩場に住む多産地のグループはほとんどの個体が殻頂が折損している状態でした。
カタツムリの殻は成長後も内側から補強されて厚皮化してゆきますが、多くのキセルガイ科の場合は殻頂部まで厚皮化が及びにくいため折損しやすいのは事実かと思われます。
(種によっては「シリオレギセル」のように、折れているのが普通のものもいます。)
一般的に考えると、生活環境的に岩との摩擦で摩耗が進んで殻皮が剥げてゆく過程で殻頂部の弱体化が進むということでしょうか?

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足元で踏ん付けそうだったのでちょっとどいてもらいました。

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同じ地域で見た中で、唯一殻頂が欠損していなかった個体。軟体を180度回転させてバック中。

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かなり老成して殻の表面が激しく浸食されている個体。

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交尾中と思われます。(キセルガイの交接器は左頬にある)

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この個体を見た場所では本種の個体数は少ないようですが、これは最大クラスのサイズでした。