岩岳は東西に長くて鞍状の山頂域を持つため、いったん少し下って登った先にもう一つ1682mの標高点のあるピークがあり、この辺りから地面にはわずかに雪や霧氷の落ちた堆積物が見られるようになります。

1682mピーク付近からの富士山。実際、登山道から見えるのはこんな感じがほとんど(^^;

ミズナラの巨木に苔がびっしり着生。
1682mピークの先で岩場の急降下となり、このルートで唯一のロープ場になっていますが距離は短く、すぐ前には次のピーク「下十枚山(1732m)」が見えています。
1682mピークと下十枚山の間の鞍部の東側には尾根から急峻な斜面となった先に「月夜の段」という独特の平坦な斜面が続いており、かつてこの辺りにあったもっと高い山が山体崩壊して形成された地形のように考えられますが、残念ながら期待したほどの展望は得られず、ちょっと残念。
(大井川上流を含むこの地域では「山犬段」「猪の段」など、山中の平坦な地形を「〇〇段」と呼ぶようですが、この地域はフォッサマグナの破砕帯に含まれているため崩落や浸食が激しく、山頂がやけに平坦な山も多くあって、もともと平坦な地形が隆起した後で周囲が侵食されて残ったものも含まれているようにも見えるので、それぞれ成因は違う可能性も高いです。)

こんなふうに富士山の姿を撮影できる場所は限られているため、常にキョロキョロしながら歩いている(^^;

アップにして額縁的な構図に(^^)

下十枚山の右肩に八ヶ岳もちょっと見えた。

朝霧高原西側の最高峰「毛無山」と富士川を渡る中部横断道の富士川大橋と南部IC。右端に大室山。
木々の隙間からは以前登った朝霧高原西側の山地の最高峰「毛無山」がよく見える場所があり、帰宅後に画像確認したら右側には青木ヶ原樹海と大室山も見えているのに気付いた(^^;
画像で見ると、富士川沿いで標高150mほどの南部町と標高800~900mある朝霧高原・青木ヶ原樹海の標高差にびっくりです。
下十枚山への登りになる手前の緩やかなアップダウンを越えた先の鞍部で右手が開けて笹原の向こうに富士山がきれいに見えます。
裾野の左側は木の陰になりますが、実はここがこの正規の登山ルート上で最も富士山が邪魔物なく撮影できるポイントではないでしょうか。

ロープのある岩場の先から見る「下十枚山」。

下十枚山手前の鞍部から見る富士山。
鞍部からひと登りすると背後の岩岳が目線の高さになり、岩がゴロゴロした中を少し進めば今回の最高地点の「下十枚山」ピークに到着です。

下十枚山の山頂手前から辿ってきた山並みを振り返る。左は駿河湾の水面。

駿河湾のアップ。右に見えるのが清水港と三保の松原。

下十枚山の山頂。また樹林…(^^;(左) 北斜面には残雪も少しだけ現れる。(右)
ここも何故か山頂は木に囲まれていて展望が良くありませんが山頂の西側は開けた笹原となっており、少し北寄りに進んでから尾根の西側を歩くようになると、このルート一番の南アルプスの眺めが待っています。

下十枚山の西斜面には笹原の別天地が広がる。

笹原の向こう側は安倍川の谷に向かって落ち込んでいます。
下十枚山の西斜面からのパノラマ。(左右にスクロールできます)

この辺りが最もこの山域の特徴的な風景といっても過言ではないですね。

最終目的地の「十枚山」がやっと見えた。背後は荒川岳・布引山・笊ヶ岳。

赤石岳・荒川岳・布引山・笊ヶ岳。左の中景には大谷嶺と大谷崩れが見えている。
南アルプス深南部から続く稜線。ちょっと木で隠れているが、北岳まで見えてます。(左右にスクロールできます)

間ノ岳・農鳥岳と北岳。障害物なしで見える場所は無かった…

安倍川の谷の別天地「大代集落」とさらに西の大井川の谷を隔てた「大無間山・小無間山」。

安倍川の谷と静岡市街、駿河湾、右奥に御前崎。
広々とした笹原からの眺めは本当に最高で、北に目を転じればこれから向かう「十枚山(1726m)」の山頂も見えてきます。
でも、下十枚山から十枚山までの中間には標高1580mほどの「十枚峠」が待っており、標高差150mほど下って、再び登り返さなくてはなりません(^^;
まあ、普段お馴染みの横川山から富士見台を往復するよりは登下降の差は少ないけど…
下十枚山から十枚峠へのルートは、初めは明るい笹原~ダケカンバ林ですが、北斜面に入ると日の当たらない場所では部分的に凍結もでてきます。
峠が近づくと日当たりの悪い緩斜面となり、湿度が高いせいかダケカンバとミズナラの混交林となり、岩に苔が付いた独特の景観も見られて飽きません。

日当たりの悪い北斜面は独特の景観。

ミズナラと苔のロックガーデン。

あれれ、いつの間にか富士山に雲が…。
しかし、峠が近づいて東寄りの尾根筋に出てみると、富士山にはすでに雲がかかり始めています。
「あれー、雲が湧くのはお昼ごろからじゃなかったの~」っていう感じですが、北西風が当たる富士の風下側には収束帯ができて複雑に気流が回り込むため、愛鷹山や伊豆方面に雲がかかるのは普通で、今日も北西から流れる雲と、南東から湧き上がる雲が複雑に絡み合っているようです。
十枚峠に到着すると、西側に開けた明るい斜面が広がり、風も遮られてポカポカ陽気でお昼寝に好適な環境っていう感じ。
今日ここで初めてザックを下ろして休憩、靴紐のお直しや富士山の展望を求めて東側の斜面の探索などもしておきました。

久々に登場。(左) 明るい雰囲気で気持ちの良い十枚峠。(右)

十枚峠を隔てた下十枚山。(左) 尾根筋は右側(東斜面)が切れ落ちています。(右)
最後の十枚山までの標高差に何となく気後れしてしまいますが、実際あと130mほどの登りで30分の辛抱と自分に言い聞かせ、十枚山への登りにかかります。
峠から十枚山への傾斜はそれほどきついわけではなく、40分ほどで(^^;やっと笹原の天辺が見えてくると十枚山の山頂に到着です。今回も全体的には登りにかかると息が上がってしまい、登山口からは写真撮影や休憩も含めて4時間半以上かかっていることから、またまた体力の低下が露呈しちゃいました。
十枚山の山頂は南面が笹原となっていて、西~南~東にかけての展望が開けて気持ちが良いですが、北側にはダケカンバ林が広がっていて残念ながら期待していた北側の南アルプス方面~富士山の展望はききません。
静岡県や山梨県の山でよくある「富士山の方向だけ木が刈り払ってあって、富士山の展望がよい」ということはなく、ダケカンバ林に隠されて富士山の展望はイマイチでした(^^;
山頂南面の笹の斜面を少し下って、何とか富士山の山頂が見える位置で証拠写真を撮っておきましたが、笹の斜面にある踏み跡はとっても急傾斜で、人が歩く場所ではなくて実はシカの歩く獣道のようでした(^^;

明るい山頂に到着。富士山は右の林の中…。
十枚山の山頂から東~南~西の180度パノラマ。(スクロールできます)

とりあえず笹原の急斜面を少し降りたところから何とか見える富士山(^^;。
山頂に荷物を置き、カメラだけ持って山頂北側の道をたどって展望の良さそうなところを探してみることにします。
山頂から北に下った辺りはなだらかな地形となっていて、ダケカンバ林が開けた笹原となって南アルプスが見渡せる場所がありましたが、きれいなダケカンバ林が広がっている場所が多く、あまり進んでも展望は開けそうもありませんでした。
周辺を少し探索し、山頂まで戻ってお昼御飯(今回も冷たいお食事)とし、奥さんにも無事登頂の報告を入れておきました。

山頂の北側へ歩いてみます。

周辺は若いダケカンバの美林が続いています。

少し平坦な地形で笹原が開けて南アルプスが見えた。

ブナの木肌も良い雰囲気。

これもishidaの大好物。空に両手を広げるダケカンバ。

山頂にある鐘はここの名物らしい。この日はishidaも含めて誰も鐘を鳴らしていないはず…(^^;

十枚峠とその背後に広がる駿河湾。

富士川の河口から狩野川の河口にかけての駿河湾の海岸線のループをアップに。

標柱にカメラを置いてセルフ撮影。

午後の陽射しで山の西斜面にも陽射しが入り始めた。

下十枚山と、背後に特異な姿を見せる岩岳。
気象予測通りですが、気温は一桁くらいでも風も弱くてお日様もポカポカ、なんとなくのんびりしたくなる時間帯ですが、ここまで来た道を同じ距離戻らないといけないので、念入りにストレッチしてから下山にかかります。
十枚峠への下りはまだしも、そこから下十枚山への登りが帰路の最大のネックとも思いますが、それ以降はアップダウンはあっても下り基調だよね…と自分に言い聞かせます。

これもishidaの大好物のブナの樹形。

若いブナの群れ。

苔のロックガーデンにも陽射しが入っていました。

下十枚山西面の笹原まで登り返して再び南アルプスの展望。
幸いにも(息が上がる以外は(^^;)特に支障なく下十枚山まで登り切り、写真撮影もはさみながら順調に戻ることができました。
富士山に巻いてきた雲も八合目より上を隠すことはほとんどなく、午前中とはまた違った表情を見せてくれています(^^)

富士山頂をアップで。

苔の着生で覆われたブナ。
石がゴロゴロしたような場所も少なく、1682mピーク手前のロープ場以外は危険な箇所もないこともあって、岩岳から先は気持ち的にも余裕も出てきて、とりあえず予定通り16時前には登山口に戻れそうです。
十分余裕がありそうだなと思うと、ついついまた寄り道して富士山の撮影をしてしまうのがishidaのイケナイ所ですけど…(^^;

往路と同じ場所まで藪を漕いでまた富士山を撮影。時間が違えば構図は同じでも撮れる写真は全く違うね。

峠の先で振り返って見る岩岳はずいぶん重量感があってカッコ良かった。
相変わらず富士山の眺望もあるし、時刻的にも夕方感を覚えることもなく地蔵峠まで戻ることができ、峠から先は消化試合的に歩いて無事にエブリちゃんの待つ正木峠登山口に戻りました。
結局、この日は全く人には会うことは無く、別ルートも含めて当日に十枚山に登ったのはishidaだけだったようです。
着替え後にこの先の運転に備えて念入りにストレッチ、奥さんに無事下山の報告をしてから帰宅の途につきます。

登山口で待つエブリちゃん。登山口は右のカーブ地点、背後には岩岳の西斜面が見えていた。
帰路は新東名浜北ICで高速を降り、夕食は久々に「さわやか浜北店」でげんこつハンバーグを…と思ったら、駐車場はほとんど空きがないうえに受付したら70分待ちとのこと…。
事前情報では昨年価格がアップしたため最近は空いているとのことだったが、週末の夜だったのが敗因でしょうかね。
一旦順番待ちの受付をしたものの、70分も待つんじゃ帰宅時間もそのぶん遅くなってしまうのでやむなくキャンセル、自宅に帰る方向でめぼしい場所があったら寄ることにしましょうかね…。
結局、偶然通りかかった浜松西IC前の「さわやか浜松西インター店」(ここにあるって知らんかった)を見ても駐車場は満車だった…やっぱりある人気じゃん(^^;
坪井IC経由で浜名バイパスに乗ってしまえば自動的に自宅直近まで行ってしまうので、結局お馴染みの自宅直近にある「そば源」で大好物のカレーめんを食べて帰りました。
------------------------------------ 今回の行程 ------------------------------------
自宅 3:18 ~ 3:53 東名三ヶ日IC ~4:15 新東名 浜松SA 4:45 ~新静岡IC~ 6:18
正木峠登山口(往路161.4Km)
登山口 6:55 --- 7:36 地蔵峠 7:40 --- 8:38 岩岳(1652mピーク) --- 8:50 1682mピーク ---
9:20 鞍部 --- 9:40 下十枚山 --- 笹原・苔の庭園 -- 10:39 十枚峠 10:54 --- 11:35 十枚山(昼食)
12:40 --- 13:13 十枚峠 --- 13:55 下十枚山 --- 14:37 岩岳(1652mピーク) --- 15:15 地蔵峠
15:22 --- 15:57 登山口
正木峠登山口 16:22 ~新静岡IC~浜北IC~ 18:08 さわやか浜北店 18:20 ~ 浜名バイパス坪井I C~ 19:30 そば源
20:04 ~ 20:08 自宅(復路153.3km 往復314.7km 平均燃費18.7Km/l)