ホルストガエル

両生網 無尾目 アカガエル科  体長120mm前後

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実際に体長120mmくらいの成熟個体を見たら、大きさと重量感にびっくり。

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この個体は警戒して伏せの姿勢。逃げられないまでも、このような姿勢の写真が多くなってしまう(^^;

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これも体長100mm強のほぼ成熟個体です。

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成熟個体を見るまではこの体長70mmほどのものでも十分大きく見えました。

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これは50mmほどの未成熟な個体ですが、背面の茶色と側面の白さがきれい。

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赤茶色の背面に体側や腹面の白さと手足の縞模様が際立って目立つ未熟個体。

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体長50mm程度ながら、やや大人っぽい体色の個体もいました。

沖縄本島北部と慶良間諸島の渡嘉敷島のみに生息する大型で重量感のあるカエルです
主に渓流の周辺に生息しており、夜間に沢沿いの森や林道などで見られます。

完全に夜行性のため、これまで夜間の渓流周辺での観察で出会ったほとんどが成体になり切っていない小型個体ばかりでしたが、2023年3月の沖縄遠征でやっと成熟した大型の個体に複数出会うことができました。
夜間の沢歩きでは小型個体しか見られず沢に近い林道沿いでは大型個体が見られることから、小型のうちはあまり水辺から離れず、成長してからは森林内や林道沿いなどに活動範囲を広げているということのようです。

全体的に幅広な体型に加えて鼻先が短く、大きさ以上に「横綱体型」に見えます。
小型の個体は腹部の白さに加えて背面が濃いこげ茶色、後肢の縞模様が目立つ奇麗なカエルというイメージですが、成長につれてややコントラストの低い色合いになるようです。
写真でははっきりしませんが、前足の指が4本の他の一般のカエル類に対し、奄美大島に棲む近縁な「オットンガエル」と本種だけが前足に5本の指を持っているそうです。(実際にはカエルは人の親指に相当する指が退化して消失しているため、本種のものは2次的に発達した軟骨性の拇指なので、厳密には指ではない)

見た目は重量級ですが、意外にも似たようなサイズの「ヒキガエル」などとは違ってジャンプ力は非常に強くて、夜の林道で見掛けたうちの半数は撮影する暇もなくあっという間に大ジャンプで森の中へ消えていきました(^^;

現在では北部のやんばるが本種を含む沖縄固有種の主な生息地となっていますが、沖縄本島南部の具志頭(八重瀬町)にある「港川フィッシャー遺跡」では2万年ほど前の旧石器時代の人骨「港川人」が発見されており、同時に「リュウキュウジカ」「リュウキュウムカシキョン」といった絶滅哺乳類に加えて「ケナガネズミ」「ヤンバルクイナ」「ホルストガエル」といった、今では北部のやんばるでしか見られない生き物の化石が発見されており、先史時代には南部まで彼らの生息できる環境だったことが判ります。