リンコデムスの一種
扁形動物門 有棒状体綱 三岐腸目 リクウズムシ
科 体長20mm程度

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細く尖った頭部を盛んに動かしながら這っていた。

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動きは活発で、近くのカタツムリを撮影後にもう一度見たらもういなくなっていた(^^;

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コウガイビルなどとは違い「ちゃんとした目がある」ように見える。

コウガイビルに代表される「扁形動物」に属する動物は、陸上で普通に見掛ける生き物の中では最も人間から程遠い分類群とも言って良いような生き物です。
一見した印象は名前にあるように「ヒル」の仲間のように見えますが、ヒルは「環形動物門」に属し、体節構造を持っていて、節足動物や脊椎動物などの一般的な生き物と同様に口から肛門へと続く筒状の消化器官を持った生き物です。
それに対して海棲の「クラゲやイソギンチャク(刺胞動物)やヒトデやウニ(棘皮動物門)」など放射状で前後左右の無い生き物たちに比べれば、一応は「前後・左右・裏表」がある「扁形動物門」の生き物というのは広義の「ムシ」っぽい姿をしてはいます。
しかし、本種を含む「ウズムシ」の仲間は摂食口と肛門を兼ねた咽頭が腹部中央辺りにあって、消化管はY字状に3分岐して1本が前方、2本が後方に延びていることから「三岐腸目(Tricladida)」と呼ばれています。

「三岐腸目」の生き物としては水棲の「プラナリア(ウズムシ)」が有名で、本種を含むリクウズムシ(Geoplanidae)科も陸上に棲む彼らの同類です。(Geo:陸の-Planidae:プラナリア類という命名)
一般的なプラナリアのイメージは、矢尻状の頭部に一対の眼があってユーモラスに思えるのですが、陸棲の仲間たちにはそのような外見のものはおらず、どちらかというと眼鼻のはっきりしないグロテスクな生き物というイメージしかありません。

以上は共通的な内容ですが、相変わらず前置きが長いのがishida式です…(^^;;;;;;

分類体系的には科や亜科について色々な意見があるとのことで、ここではWikipediaに掲載されているものに準拠しますが、「リクウズムシ科」の下位には「コウガイビル(Bipalium)属」「リンコデムス(Rhyncodemus)属」「ゲオプラナ(Geoplana)属」の3分類あり、本種は「リンコデムス属」に属しているということになります。

リンコデムス属のものについては体形はゲオプラナ属のものによく似た先端の尖った単純な体型をしていますが、体の先端(一応は頭部と呼んでいいのかな?)の先端寄りに「一対の眼」があるのが特徴です。
これは多数の眼点を持つ他のリクウズムシ科の陸棲プラナリア2属とは大きく異なっており、どちらかというと水棲のプラナリア(ナミウズムシ)のような特徴です。
ただ、単純に類縁的にプラナリア(ナミウズムシ)に近い系統だからなのか、また一対の眼(眼点と呼ぶにはためらわれるような「目らしさ」を感じる)を持つ生態的な有利さがあるのかどうかについてはよく判りません。
実際、よく見ると体の先端には「一対の眼」以外にも黒い粒々状のものがあり、これも光受容器官なのかもしれませんが…(^^;

今回紹介したものは沖縄のやんばる地域で見たものですが、サイズ的には20mmほどと小型ですが、非常に活動的に見えました
沖縄といえば「侵略的外来生物ワースト100」にあげられる「ニューギニアヤリガタリクウズムシ」が侵入しており、この個体がその幼生なんじゃないかなという疑いも感じましたが、今のところ分布は南部に限られているということだし、実際にやんばる地域では見たことがありませんので別種かと思います。

ネットなどでも日本各地のよく似たものの写真がちらほら見られますが今のところちゃんとした資料には出会えず、これも種不明なままです。