イシマキシロマイマイ

軟体動物門 腹足網 柄眼目 オナジマイマイ科 殻径約13mm

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全体が白っぽく、大触角の先端に向けて黒っぽい。

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大触角の色が全体的に明るい色の個体。

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螺高は低めでやや丸みがある。

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昨年生まれたと思われる幼貝。茶褐色の放射状の「火炎彩」状の模様が目立つ。

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幼貝や未熟なものは殻の表面には細かな引っ掻き傷のようなテクスチャが見えます。

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成熟して全体が艶消しになった個体。

近畿・中国・四国などに生息する「オトメマイマイ」に近縁で、形態もよく似ています。
各地で種分化した「シロマイマイ」と名の付く近縁種がおり、本種は愛知県東部の石灰岩地帯の固有種で、新種記載された模式産地の石巻山から和名がとられています。
(実際、図鑑などで比較しても、ishidaの目では四国などに分布している和名「シロマイマイ」と一見して違いは判りません…)

前述のように多くの陸貝は移動性に乏しいため地域隔離による種分化が進んでおり、本種も記載当初は愛知県東部から静岡県西部に断続的に所在する石灰岩地帯に生息するとされていたようですが、最近の愛知県の「レッドデータブックあいち2020」の資料では「遺伝子解析の結果から静岡県のものとは別種として扱うべき」とされています。

名前の通りに殻も軟体部も全体的に白っぽくて大触角だけが黒っぽくなっており、現地ではよく似たものはいないため他種との見分けは容易です。
殻の形は低いストレートな円錐状で、特に幼貝は成長脈(殻が延長されることでできる年輪のような筋)が目立たず、殻表皮に細かな引っ掻き傷のようなテクスチャがあり、殻全体も透明感があって放射状の火炎彩状の模様(実際には軟体部の模様が透けて見えている)がかなり明瞭に見える様は繊細な感じです。
成熟したものは殻の表皮がはがれることで細かなテクスチャは失われ、反射率の高い白い殻の表面が表れて艶消しの白になり、逆に火炎彩状の模様は見えなくなります。
不思議なことに、成長途中の段階では前述の殻表皮の状態は全体が保持されていますが、成長が止まると殻全体の表皮が一気にはがれてしまうように見えます。

なお、石巻山の上部(概略は旅館街より上)は「石巻山石灰岩地帯植物群落」として国の天然記念物、愛知県の「石巻山多米県立自然公園 第1種特別地域」に指定されており、動植物の採集は現状破壊行為として禁止されています。