ヒメユリサワガニ

節足動物門 エビ網 エビ目(十脚目) サワガニ科  甲幅30〜40mm

himeyurisawagani_P3228221.jpg - 134,166Bytes
全身を写すことができた記念すべき初ショット。落ち葉を食べている。

himeyurisawagani_P3228227.jpg - 109,232Bytes
このようなアングルで見ると「足長さん」がより目立つ。

himeyurisawagani_P3228240_2.jpg - 130,319Bytes
甲幅40mm近い大型のオス。右側のハサミが非常に大きい。

himeyurisawagani_P3228255_2.jpg - 140,244Bytes
ハサミは大きさの割りに厚みは少なめに見える。

himeyurisawagani_P3228290.jpg - 131,057Bytes
脚の長さを生かして、このように岩の間を渡り歩くことができる。

himeyurisawagani_P3228368.jpg - 133,976Bytes
膝くらいの高さのシダ上で活動中。かなり3次元的な行動範囲です。

himeyurisawagani_P3228357.jpg - 163,009Bytes

himeyurisawagani_P3228276.jpg - 126,500Bytes
全体的に薄っぺらな体型は岩の隙間などに入りやすくする適応か?

沖縄本島に生息する中型のサワガニで、本種は陸棲に特化したサワガニ類の中でも最も陸上生活に適応した種といわれ、外観は他のサワガニと比べて非常に歩脚が長い独特のプロポーションをしています。
全体的には甲がやや平べったくて平滑、オスのハサミは他のサワガニ同様に片側(左右どちらか)が非常に大きく発達しますが、ハサミ自体の厚みは薄く見えます。
長い歩脚や全体に薄っぺらいプロポーションは、岩の間を渡り歩いたり隙間に隠れるのに都合が良いように進化したものではないでしょうか。

サワガニ以外の陸棲のカニ類が全て幼生期間を海で過ごしてから稚ガニの姿で上陸するのに対し、サワガニ類は卵から孵化した時点ですでに稚ガニの姿をしており、海に依存することなく発生・成長することができます。
それでも他のサワガニは孵化した稚ガニを水中に放す必要があるため、森で暮らす種でも水辺に依存して生活しています。
それに対して本種の場合は稚ガニをそのまま陸上に放すことが可能といわれ、周辺に沢や湿地などがない場所にまで生息することが可能です。
そのお陰で他のサワガニが生活できないカルスト地帯や山の稜線近くの岩場などの領域に進出していますが、逆に生活環境が厳しい場所に追いやられているとも思われ、実際に沖縄本島全域に生息しているとはいっても生息地は非常に限定的なようです。
因みに、沖縄本島に生息する4種のサワガニは全てレッドデータブックに記載され、特に本種は生息地が限られるため絶滅の恐れが最も高い部類(絶滅危惧T類 (CR+EN))に分類されているだけでなく、種の保存法による「国内希少野生動植物種」にも指定され、採集や販売・譲渡などが禁止されています。

2016〜2019年の沖縄遠征では本種が生息しているような場所へ出掛けておらず、コロナ禍明けの2023年の遠征時に初めて実際に生息していそうな場所へ探索に出掛けました
(本種はほぼ完全な夜行性のため、昼間のうちに下見をして生息地の目星をつけておき、再度夜間に出掛ける探索スタイルでした。)
しかし本種の撮影自体はなかなか難しく、1回目は生息は確認できましたが逃げ足が速くて証拠写真程度、2回目はちょっとルートミスも加わって空振り、3回目の探索でやっと数個体を撮影することができました。

最初に全身を撮影できた個体は地面の落ち葉を食べており、ヤマガニなどと同様に雑食性ながらも植物性のものを食べる割合はけっこう多いようです。