アオハダトンボ 

トンボ目 カワトンボ科  体長60mm前後

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2024年に満を持して撮影に挑み、やっと出会えたオス個体。

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翅を開くと翅脈全体が青く輝く様は非常に美麗。

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光の角度によって微妙に色合いが変わって見える。

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実は他のカワトンボに比べてこのように翅をパタパタッとする頻度が高いんです。

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この個体は右前翅が少し破損していた。

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どうしてもヨシの茂みや枯れ枝が背景に入り易い(^^;

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オスの腹端は下面が白い。「腹筋運動」は腹端の性器から副性器への精子の移動に関わる動き?

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メスは翅脈の青い輝きがなく、翅色もコーヒー色っぽくて白い偽縁紋が目立つ。

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前翅は先端に向かって淡色で、後翅は逆に付け根の後縁が淡色。

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翅をパタパタすると白い偽縁紋がとても目立つ。

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やや未熟なのか、翅脈の青い輝きが控えめなオス個体。

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オスはメスの前で腹部を反らし翅を開いて求愛する。メスは気に入れば近くに定位する。

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定位したメスに上から接近してホバリングするオス。

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上から掴みかかり、腹端の付属器でメスの首根っこを掴んで固定します。

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オスはメスの体を持ち上げて交尾を促し、メスが腹部を曲げて副性器に接続することでハート形の連結が完成。

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メスは交接後すぐに産卵に移る。

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産卵中のメスを警護するオス。翅パタパタは他のオスへの牽制か?

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産卵中のメス(奥)と、近くで警護するオス(手前)。

本州と九州に飛び地的に分布するカワトンボ類で、主に河川の中流域に生息し、とまっている姿は遠目には「ハグロトンボ」のように見えます。
しかし、翅脈が青い輝きを帯びており、特に翅を開くと非常に目立つ輝きを帯びています。
オスの体全体が青緑色で翅脈が青く輝き、メスの翅には白い偽縁紋が目立つといった特徴自体は南西諸島に生息する「リュウキュウハグロトンボ」によく似ていますが、翅脈の青さが主に翅の付け根側に集中する傾向のある前種に比べると本種の場合は表裏とも翅全体の翅脈が青く輝く点が異なり、類縁的にも同属ではありません。
「ハグロトンボ」はAtrocalopteryx属(ハグロトンボ属)、「リュウキュウハグロトンボ」はMatrona属(タイワンハグロトンボ属)、本種はCalopteryx属(アオハダトンボ属)に属しており、「ミヤマカワトンボ」とは同属となっています。

本種は他のカワトンボ類に比べて生息環境に対する好みが非常に狭いのか、清冽な流れとヨシの植生が必須条件のようです。
条件が合えば他のカワトンボと同じ場所で見られますが、全国的にも生息地は限られており、国内に生息する7種(本州では5種)のカワトンボの中で唯一「準絶滅危惧種(NT)」に指定されています。
ishidaの普段の自然観察のフィールドには生息地は無く、色々リサーチして当りを付けて探した場所でやっと出会うことができました。
生息地でも他の「ニホンカワトンボ」「アサヒナカワトンボ」「ミヤマカワトンボ」と同所的に生息していますが、生息している範囲も狭く、個体数も少ない状況です。
習性的にも必ずと言って良いほどヨシの茂みに定位しており、開けた河原や岩の上などに来ることは殆どなく、同じ川の中でも、ヨシの生えていない場所では全く見られません。

2024年に観察できたフィールドでは他の3種がGW前後に現れるのに対し、本種は6月初旬ごろに出現が始まるため、梅雨の時期と重なって観察はなかなか難しそうですね。

オスは川沿いのヨシの葉などに定位して縄張りを持ち、他のオスが縄張り内に入ると向かい合うようにして空中戦を行います。
本種の配偶行動はちょっと変わっていて、オスは縄張り内に来たメスに対し、前側に回って腹部を上に反らて腹端下面の白い部分を見せなながら翅を開いて求愛します。
(これは同属の「ミヤマカワトンボ」も同様)
メスが逃げなければ、更に水に浸かるようにして水面に降下し、抽水植物にとまりながら翅を水面に打ち付けます。
これは「ここに産卵に適したいい場所ありますよ~」というアピールだと思われます。
(「リュウキュウハグロトンボ」の場合は、水面に落ちて流される行動も見られますが、本種の場合はそこまでしないようです)
オスのアピールを見て気に入ったメスは枝にとまって静止し、オスが上空でホバリングすると翅を開いて応えているようです。
オスはメスの翅にある白い偽縁紋を目印にするように上から掴みかかって腹端の付属器でメスの首根っこを固定します。
メスの前方に回ったオスは更に腹部を持ち上げながら曲げてメスの体を持ち上げ、メスの頭を自分の腹部の付け根下面にある副性器(貯精器官)に近付けることでオスの副性器を視認させているようで、メスは腹部を前側に曲げて腹端をオスの副性器と連結させることで均翅亜目特有の「ハート形の連結」が完成します(^^)
ハート形の連結時間は長くても1分程度で終わって分離し、メスはすぐに産卵に入ります(トンボの受精に要する時間は非常に短い)

カワトンボ科のトンボはイトトンボ科のように連結したまま産卵することは無く、オスは産卵中のメスのすぐ近くにとまり、見張るようにして翅をパタパタさせて他のオスに邪魔されないように牽制しているようです。