(ishida式の趣味に特化した…) マクロ撮影の薀蓄 

【 ishida式のマクロ撮影の機材と使いこなしF 】

これまでのマクロ撮影機材とishida式のテクニック等について、第1回は機材についてが主体、第2回でマクロ機材の使いこなしのテクニック、第3回第4回第5回では単なる新機材の紹介(導入の言い訳?)を述べてきました。

前回第6回のこのコーナーで、等倍以上のマクロ撮影のフラッシュ撮影用にフラッシュディフューザーを製作してクリップオンストロボでの機動性を含めて一定の効果には満足していました。
これ以上はマクロ専用の「リングフラッシュ」か「マクロツインフラッシュ」といった、専用品を使わなくては難しい領域となります。
Canon・Nikon製カメラのユーザーさんにはサードパーティでTTL調光可能なリングフラッシュやツインフラッシュの選択肢として純正よりも安価な「SUNPAK」「YONGNUO」等の選択肢があるので羨ましいのですが、マイクロフォーサーズに対応したものが無いんですよね。
主要なカメラメーカーに対応しているGodoxとかがマイクロフォーサーズに対応品を出してくれないかなあ…なんて以前から呟いていたのがメーカに聞こえたのか(^^)、なんと2021年夏にGodoxからマクロ用のフラッシュ「MF12」が発売になりました。

8/19付けの「GIZMODO」で紹介されているのを(しょっちゅう「Godox」とかで検索しているからか)Yahooの新着情報が教えてくれました。
※上記の記事中に「なんならレンズホルダーはずしてアクセサリーシューに装着すれば、普通のフラッシュとしても使えます。」とありますが、装着は可能ですがシューアダプタに電子接点は無いため単独で使用はできず、あくまでもコントローラ(コントロール機能付きフラッシュでも可)+スレーブフラッシュとしてしか使えないはずなのでご注意を。

このMF12ですが、「さすがGodox」とでも言うべきワイヤレス方式で制御するスレーブフラッシュをレンズリングに取り付けるというちょっと予想の斜め上を行く製品です。
(ebayで調べてみると「Meike」とかでも同じようなものを販売しているのを見付けたが、実際にはNikon製品に過去に似たようなものがあったらしい)
レンズのフィルター部にフラッシュ取付用のレンズリングを装着するのは通常の「マクロツインフラッシュ」と同様ですが、Godoxのシステムは単独で電池まで搭載したワイヤレス専用の発光部を最大6個まで取り付け可能となっています。
6個というのはレンズリングの制約なので、、実際にはワイヤレスフラッシュトリガーで制御可能な範囲であればMF12に限らず、もっと多数の発光部をワイヤレス対応のフラッシュとしてオフカメラで使用することも可能なシステムとなっています。

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実際の購入額はもうちょっと上乗せ。最近では日本の各種販売サイトでも極端に変わらない価格で販売開始しました。

まずは「カメラに対応したワイヤレスコントローラ」+「2個の発光部と取付アタッチメントが同梱されたセット(MF12 K2)」を購入すれば「マクロツインフラッシュ」として使用可能です。
(もちろん「カメラに対応したワイヤレスコントローラ」の代わりに「ワイヤレスコントロール可能なクリップオンストロボ」での使用も可能です。)
つまり、これまでは「各カメラメーカー専用のマクロフラッシュ」が必要だったものが、このシステムであれば「コントローラだけ」カメラメーカー用のものを準備するだけでマクロフラッシュ側はTTL調光可能な汎用マクロフラッシュとして使用可能になります。
(Godoxやその他サードパーティ品のワイヤレスコントローラ自体は各カメラメーカに対応したものが必要ですが、価格は5K〜10K円程度と安価です。)
最近ではメーカー純正のフラッシュもワイヤレスコントロール機能を持っているものが多くあるので、それがあれば専用のワイヤレスコントローラも不要だと思われます。
自分の場合は手持ちのGodoxのクリップオンストロボ「TT685o」「V-1o」ともにワイヤレスコントロール機能が搭載されているのでワイヤレスフラッシュトリガーは無くても使用可能ですが、「TT685o」の購入時にワイヤレスフラッシュトリガー「X1T-o」とのセット品を選択していたので、「X1T-o」+「MF12 K2」で軽快な通常のマクロツインフラッシュとして使用可能です。
とはいえ、クリップオンで取り付けるコントローラは軽快ですが、バッテリー内蔵の発光部側はそれほど軽快とは言えませんね…(^^;

クリップオンストロボ「TT685o」もしくは「V-1o」と組み合わせれば(もちろんTTL調光可能な)トリプルフラッシュ(?)システムやそれ以上の多灯システムとしても使用可能です。

この「Godox MF12 K2※」というのは、実際には「ワイヤレスのスレーブフラッシュと取付用のアタッチメントをセットにした」製品なんですが、ishidaとしてはワイヤレス機能のある小型フラッシュを組み合わせてこういうのを自作してみようかと思っていたくらいなのでメーカ発のアイデア商品ともいえますね。
※末尾に「K2」と付くのが2灯+アタッチメント+レンズ取り付けリングがセットになったキットで、「無印」の場合は発光部+アタッチメントのみ、「K4」はK2+無印×2台のセットとなっているようです。
まずは「K2」キットを購入して、必要に応じて「無印」を複数個買い足してもよいでしょうね。
ebayでは何故か「K4」を購入するよりも「K2+無印×2台」で購入したほうがお安いのは何故?
Godox公式サイトでは付属アクセサリーの違いはなさそうでした)

また前置きが長いですが…(^^;
ebayで出ている商品のお値段を調べて、「MF12 K2(2灯)キット」で純正マクロツインフラッシュの半値くらいなのを見たらついつい物欲に逆らえずポチッとな。

eBayでの値付けは最安ショップで$249でしたが、PayPalの換算レートで\28516(114.5円/$)のお支払いとなりました。
日本国内でもAmazonなら1割増しくらい、他サイトであれば最安でPergear Japanでは6%OFFを謳って\29690という販売価格もあったので、eBayとは大きな差はないですね。

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従来から持っていたコントローラ部は軽量で背も低いが、発光部はバッテリー内蔵でやや重厚…(^^;

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発光部の奥行きはあるが、前面投影面積は一般的なツインフラッシュ並かな。

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付属のコールドシューアダプタとスタンド(左)単体で使用する際の形態。拡散板の取り付けはパッチン嵌め(右)

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単独セッティングの状態。こんな感じで角度調節可能です。

------------------------------ 一長一短ありますが製品の特長 ------------------------------

◎…カメラメーカーに制約なくTTL調光も含めて使用可能
 (ワイヤレスコントローラ/ワイヤレス機能付きフラッシュは別途必要)
◎…マクロツインフラッシュとしては価格が安い(^^)
◎…ワイヤレスのため、発光部とつなぐカールコードなどは無くてスッキリ
◎…手持ちの機器との互換性(2.4GHzワイヤレスシステム対応)
◎…コントローラの能力の範囲内でマクロ以外にも多灯化が容易・拡張性が高い
◎…リチウムイオン電池+Type-C充電に対応
◎…付属アタッチメントでワイヤレススレーブフラッシュとしても使用可能
〇…付属アタッチメント(コールドシューとスタンド)両方に1/4ねじ穴装備
 (こういうところは地味に嬉しいし、後述のように活用の幅が広がる)
〇…表示部は見やすく多機能
 (表示パネルはOLEDのため視認性が高い)
〇…ワイヤレスチャンネル数が多い
 (5グループ/32ch/ID設定可能)
〇…発光部単体での買い増しも可能
〇…発光部にモデリングLED搭載
 (ただし個々にスイッチ操作が必要)
〇…レンズ取り付け用のアダプターリングは49/52/55/58/62/67/72/77mmと多数付属
 (しかし、M.Zuiko 60mmに対応したアダプターリング46mmは付属せず)

△…レンズ取り付けリングの着脱が煩雑(他の機種はよく知らないが)
△…フィールドでは嵩張る
 (実際には他の機種と前面投影面積には大差なし?)
△…付属の拡散板は「パッチン嵌め」取り付けで着脱が煩雑だし紛失しそう
 (オリンパス純正品のように跳ね上げたりできるほうが嬉しいし紛失防止になると思う)
×…防塵・防滴性に不安あり (内部構造は不明だが、Type-C端子は剥き出し)
×…マスターコントローラと個々の発光部でそれぞれ個別の電源管理が必要
×…コントローラ・各発光部個々に設定やスイッチがあり煩雑
×…バッテリー着脱不可のため不意の電池切れの不安

といったところで、カメラの機種を選ばない汎用性や価格の安さ、ワイヤレならではの多灯化対応やスレーブフラッシュとして使用可能なアタッチメントが付属しているところがこの製品の最大のメリットです。
逆にフィールドで持ち歩いて使用するのにあたっては、電池交換できないことや防塵・防滴性の不安はどうしても付きまといますね。
フラッシュって内部に高電圧(数百ボルト)の高電圧・高電荷が存在するので防滴性には配慮が必要だと思うのですが、充電用のType-C端子にも端子カバーさえありません。
高電圧部を遮蔽したり浸水を防止するような内部構造的な配慮がされているのかは不明です。
あ、そんなことを言ったら昔の仕事を思い出して身につまされる思いが…(^^;;;;;;;;;

----------------------- 軽快化・応用の試行錯誤・アタッチメント製作 -----------------------

付属のレンズリングで発光部をレンズ前面に取り付けて使用すること自体は一般のマクロツインフラッシュなどと同じですが、電池を含めてそれなりの重量があるものだし、レンズ側(ishidaの場合はマウントアダプタも含む)へのストレスやフィールドでの取り扱いにやや不安も感じます
そもそも複数のマクロレンズで使おうと思うとレンズの前面に装着するレンズリングではフィルター径も違ったりして移設が面倒だし、もう少し着脱や持ち運びの簡便性と拡散板取り付けなども考慮して、レンズリングを使わない方式を模索してみました。

※今思えばレンズリングを使わないなら「MF12(無印)」を2個買ったほうがお安く済んだよね、という影の声が聞こえてきた気も…(ここは小さい声で)

影取り効果を高めるための拡散板(ディフューザー)取り付けについては固定方法が最終確定してから形状を検討する必要がありますが、まずは手持ちのプレートやAmazonからやってきたフレキシブルアーム類と組み合わせて試作したものがこれです。

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手持ちのスライドプレートにコールドシューアダプタ、フレキシブルアームを追加工して取り付け。

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もうちょっとレンズ直近のスパンを広げる&取付位置が可変できるようにしたいね。

まずは試写してみると、ツインフラッシュのみでの使用ではやはり影の出方は硬めだし、ガイドナンバー16×2といっても被写体との距離が遠い場合は絶対的な光量にも不安が出てきます。
やっぱりクリップオンストロボ単体での撮影を基本とし、そこに状況に合わせてMF12をプラスした3灯で運用したほうが何かと便利な気がしてきました。

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Godox V1o+MF12×2灯で撮影した「オンブバッタ」。V1oは拡散板なしの直射のため影がきつめに出ている。

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Godox V1o+MF12×2灯で撮影した「ミカワギセル」。ツインフラッシュ光源の反射がはっきり見えている。

クリップオンストロボと組み合わせた場合には、従来の通りに「自作ディフューザー」との組み合わせも可能にしようと思うと、フラッシュ取り付けスパンももう少し広げたほうがよさそう。
もう一つの長めのプレートを使ってマジックアームの取り付けスパンを広げ、従来のクリップオンストロボ+ディフューザーを併用できるようにした組み合わせも試してみました。

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思ったほどフロントヘビーには感じませんが、システム重量は2940g(今回追加分は703g)あります。

とりあえずは機材の組み合わせ的に分解・組み立てはしやすく、前の物よりも剛性感があって取り回し易いのは好印象。
しかし従来以上に幅広になってしまうため、屋外での近接撮影では周りに障害物があると干渉してしまうのがネックです。
試写した限りでは被写体や距離によってツインフラッシュ側のフラッシュ光による影や光源の反射がはっきり見えるので、もう少し拡散効果を高めるように拡散板を配置したいかな。

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Godox V1o(+自作ディフューザー)+MF12×2灯で撮影した「ヤマタニシ」。思った以上に平板な感じになった。

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Godox V1o(+自作ディフューザー)+MF12×2灯で撮影した「ニホンアマガエル」。光源の反射や影は目立たない。

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Godox V1o(+自作ディフューザー)+MF12×2灯で撮影した「ツクツクボウシ」。フラット過ぎて立体感がない?

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上の写真の複眼部分を等倍切り出し。ツインフラッシュの反射光がはっきり写り込んでいる。

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Godox V1o(+自作ディフューザー)+MF12×2灯で撮影した「アギトアリ」。光源によるテカリがきつい印象。

まず一度これで使いこなしつつ、この先はいろいろと改善を図ってゆきたいと思います。
続報を待て!(?)

------------------- 2022年4月 ツインフラッシュ側にも拡散板追加しました ---------------

ツインフラッシュ(MF‐12)側に拡散用のカバーが装着できますが、まだまだ点光源的な強い光となる傾向が強いため、従来のソフトボックス的ディフューザーに追加する形で拡散板を設置してみることにしました。

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実際にはメインのソフトボックス側と壁で隔てられているのと、発光部と拡散板の距離が近いため効果としては限定的になりそうですが、これを参考にしてディフューザーの進化版を製作しても良いかなという気持ちで製作したものです。
従来からある構造(と前回製作時の端材など)を生かし、最小限の投資(?)で製作出来ました。

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全体的に横幅が大きくなってしまったため屋外での取り回し性や被写体側の視認性がさらに低下してしまいますが、艶のある甲虫などに対してもよりソフトな反射具合になっています。
特に等倍付近での撮影時も被写体の下側にまで光が回り易くなったため影がよりソフトになっただけでなく、体の下側の口器や脚も影になりにくくなったと感じます。
ただ、やはりフラットな配光のせいで立体感に欠けた写真になりがちなので、対象や撮影距離に応じてケースバイケースでライティングを変える必要はありそうです。

以下、テストで使用した作例です。

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「キイロクビナガハムシ」拡散板を拡大した効果で、艶のある甲虫の反射がより自然に(?)近くなった。

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倍率1.5倍程度で撮影した「コシビロダンゴムシ」。体の下側にも光が回り易い。

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等倍程度で撮影した「ヒラタハナムグリ」。

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「マミクロハエトリ」

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上の写真のアップ。眼に光源の形が写っている(^^)

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「コメツキムシの一種」

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「モモブトカミキリモドキ」普通ならフラッシュ直射ではほぼ真黒に写ってしまう。

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「ホソセイボウかその近縁種」最もフラッシュ撮影が難しい部類の体色です。

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こちらは2021年に「フラッシュベンダー」を使用して撮影したもの。

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「イシマキシロマイマイ」 Godox V1o+MF-12×2灯(+ディフューザー改)。殻の表面などが平板に見える。

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「イシマキシロマイマイ」 Godox V1o(+ディフューザー改)。このほうが立体感があるように感じる。

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ケースバイケースで多灯撮影(左)とメイン発光のみ(右)は右端の「⇔」ボタンでワンタッチで切り替え可能。

------- ishida式のマクロ撮影の機材と使いこなし、まだまだ続く -------