被写界深度を理解しよう

被写界深度についてはレンズの焦点距離の違いで何が変わるの?のページでお話しています。
ここでまとめると、以下のような特徴があります。
・絞りを開ける(絞り値を小さくする)と被写界深度は浅くなり、ピントの合う範囲が狭くなる。
・絞りを絞る(絞り値を大きくする)と被写界深度は深くなり、ピントの合う範囲が広くなる。
・焦点距離の短いレンズは被写界深度が深く、焦点距離の長いレンズは被写界深度が浅い。
・距離が近いほど被写界深度は浅く、距離が遠いと深くなる。(手前ほどボケが大きい)

では、実際に被写界深度の違いで、どんな写真になるんでしょうか。
いつも作例がマクロ撮影ばかりで恐縮ですが…

絞りを開いて撮影
これはマクロ100mm(絞りF4)で撮影したもの。ノミバッタを捕食するキイトトンボ。

TONBO1_SETSUMEI.JPG - 12,678BYTES
トンボの体全体が被写界深度に収まるようにピントと撮影角度を調整。



絞りを開き気味にして撮影することで、背景をぼかして被写体を浮き上がらせることが出来ます。
ただし、被写界深度は浅くなるので、しっかり「眼の位置にピント」が来るようにしています。
トンボの向きも(全体にピントが来るように)なるべくカメラと平行になるようにしています。
そのせいで、背景のちょうどトンボの顔の部分に葉っぱの陰が横切ってしまったのがちょっと残念。

生き物の場合は指定した位置にポーズをとってはくれませんが、ポートレートの場合などは、光線の向きと背景に気を遣って、色々撮影位置を変えたりするチャレンジが必要ですね。
また、ファインダーで覗いた状態は「絞り開放」の状態ですので、実際に撮った写真では思った以上に背景が写りこんでしまってゴチャゴチャしたものになってしまうこともあります。
「絞りのプレビュー機能」のあるカメラの場合は、実際にプレビューしてみることで絞りの効果を確認できます。
デジタルカメラの場合は、実際に絞りを変えた効果をすぐに確認できるため便利ですね。

逆に、被写界深度の浅さを逆手にとって、部分的に強調することも出来ます。

顔のクローズアップ
マクロ100mm(絞りF4)でキイトトンボの顔だけをクローズアップして強調(^^;

TONBO2_SETSUMEI.JPG - 10,429BYTES
トンボの顔の奥行きが被写界深度に収まるようにピント位置を決める。


図鑑的な、全体が鮮明に写った写真としたい場合は絞りを絞り込んで撮影します。
(私は昆虫の撮影の場合はこっちの方が多いです)

絞り込んで撮影したキイトトンボ
マクロ100mm(絞りF11)でトンボの体全体にピントが合うように撮影

この場合、トンボの体の奥行き全体にピントが合いますが、背景の草むらのボケ具合が少なく、何となくバックがゴチャゴチャして見えますね。

しかし、マクロ撮影の場合、特に等倍撮影(フィルム面に写る像が実物と同じ大きさになる)付近では絞り込んでも被写界深度はとても浅いため、背景との距離がある程度離れていればほとんどボケた状態になります。

等倍で撮影したシモフリシマバエ
マクロ100mm(絞りF13)で等倍撮影したシモフリシマバエ。

背景が真っ暗にならないように、適度な距離と位置に葉があるようにカメラ位置を調整してあります。


下の作例は失敗というわけではありませんが、背景が近くにあると大きくボケないため、気になる場合もあります。

背景に近いものがある場合
マクロ100mm(絞りF13)で等倍撮影。バックの葉が均一なためそれほど気にならない?
ただし、フラッシュによる影がちょっとうるさいかも(^^;この後で枝先に移動してくれたのが先の作例。

背景を整理したい場合は、
@絞りをなるべく開いて撮影する。
Aなるべく単調な背景や影のバランスの良い位置になるように、撮影位置や被写体を移動する。
B撮影角度を変えて、背景が遠くのものだけになるようにする。
C焦点距離の長いレンズで、離れた位置から撮影することで、背景の写る範囲を狭くする。
といったことを頭に入れて撮影してみましょう。

背景のボケと位置をコントロールして撮影した作例をもう少しご紹介します。
残念ながらコンパクトデジカメのように実焦点距離の短いレンズや、F値の暗いズームレンズではこのようにボケてくれません。

ウマノアシガタ
絞り開放(150mm相当/F2.8)で背景を整理して撮影したウマノアシガタ(キンポウゲ)

ウマノアシガタ
絞り開放(150mm相当/F2.8)で背景を整理して撮影したウマノアシガタ

ウマノアシガタ
少し絞って(150mm相当/F5.6)被写界深度ちょっと深めで撮影したウマノアシガタ

ウマノアシガタ ウマノアシガタ
何気なく絞りF13で撮った写真(左)と、絞り開放(F2.8)で撮った写真(右)。(構図ちょっと違いますが…)

絞りを考えて撮ると明らかに違う写真になるということが判って頂けると思います(^^)